2026.3.7
舞台は高蔵寺ニュータウン
映画「人生フルーツ」伏原監督にインタビュー
高蔵寺ニュータウンの基本設計に携わった建築家、津端修一さんと妻の英子さんの暮らしを描いたドキュメンタリー映画「人生フルーツ」(2016年公開)。
おふたりの「時をためる」丁寧な暮らしぶりが大きな話題となり、ドキュメンタリー映画として異例の大ヒットとなりました。
監督の伏原健之さんに、津端さんご夫妻のことや映画の舞台となった高蔵寺ニュータウンについておうかがいしました!
おふたりの「時をためる」丁寧な暮らしぶりが大きな話題となり、ドキュメンタリー映画として異例の大ヒットとなりました。
監督の伏原健之さんに、津端さんご夫妻のことや映画の舞台となった高蔵寺ニュータウンについておうかがいしました!
東海テレビ放送 報道局プロデューサー
伏原 健之(ふしはら けんし)さん
1969年、愛知県名古屋市生まれ。93年に東海テレビ放送入社後、営業、制作を経て報道記者に。県警キャップや編集長を歴任。
三河の山奥に住む発明家を追ったドキュメンタリー「とうちゃんはエジソン」で、04年のギャラクシー大賞受賞。14年初監督映画「神宮希林 わたしの神様」公開。
映画に先立ってテレビ放送された「人生フルーツ ある建築家と雑木林のものがたり」は、放送文化基金最優秀賞、文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞を受賞。映画「人生フルーツ」はキネマ旬報ベスト・テン文化映画第1位に選ばれた。
その他作品にドキュメンタリー藤井聡太シリーズなど。
三河の山奥に住む発明家を追ったドキュメンタリー「とうちゃんはエジソン」で、04年のギャラクシー大賞受賞。14年初監督映画「神宮希林 わたしの神様」公開。
映画に先立ってテレビ放送された「人生フルーツ ある建築家と雑木林のものがたり」は、放送文化基金最優秀賞、文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞を受賞。映画「人生フルーツ」はキネマ旬報ベスト・テン文化映画第1位に選ばれた。
その他作品にドキュメンタリー藤井聡太シリーズなど。
年を取ることはネガティブなことばかりではないと伝えたかった
報道の仕事に携わっている中で、年を取ることは健康面や金銭面の不安など、いかにもネガティブに扱われるニュースが多いと感じていました。でも、それは悲観的なことばかりではないということを何とかして伝えたいと思っていたんです。
ある日、新聞記事で津端さんご夫妻のことを知ったのですが、服装も暮らしぶりもスタイリッシュで世間一般的にイメージされる高齢者とはどこか違う。高蔵寺ニュータウンの設計に携わった方が今もこんな風に現地で暮らしていることを知り、是非お会いしたい、取材させてもらいたいと思ったのがきっかけです。
でも、最初は断られてしまって。振られたら燃え上がる恋愛のようなものといってはなんですが、今思うとラブレターのような感じで、何度も手紙を書いたところ、3~4ヶ月経った頃に修一さんのイラストが描かれた絵はがきが届いて、それが了承の合図というのか、ようやく取材できることになりました。
ある日、新聞記事で津端さんご夫妻のことを知ったのですが、服装も暮らしぶりもスタイリッシュで世間一般的にイメージされる高齢者とはどこか違う。高蔵寺ニュータウンの設計に携わった方が今もこんな風に現地で暮らしていることを知り、是非お会いしたい、取材させてもらいたいと思ったのがきっかけです。
でも、最初は断られてしまって。振られたら燃え上がる恋愛のようなものといってはなんですが、今思うとラブレターのような感じで、何度も手紙を書いたところ、3~4ヶ月経った頃に修一さんのイラストが描かれた絵はがきが届いて、それが了承の合図というのか、ようやく取材できることになりました。
懐かしさと新鮮さが共存するまち、高蔵寺ニュータウン
僕は名古屋生まれ名古屋育ちなので、子どもの頃から高蔵寺ニュータウンという名前は知っていました。子ども心に、ニュータウン=未来のまちなんだと。ご夫妻を撮影するため、実際に通うようになってみると、設計、建設当時の人たちが描いた理想の未来がそこにあり、決して古いだけじゃなくて懐かしさと新鮮さが共存しているところだなあと思いました。今の若者が平成や昭和時代に憧れるような感じに近いかも知れませんね。
目の前のことをコツコツやっていれば見えることがある
津端さんご夫妻は、自分たちでできる範囲のことをコツコツ丁寧に行い、誠実な暮らしをしてこられた。そして、そんな人たちが素敵な人生の終わり方を迎える。
取材から10年以上が経って思い返してみると、そのときは気付かなかったことが真実として迫ってきます。「目の前のことをコツコツやっていれば見えることがある」とご夫妻は言われましたが、この作品を作った当時よりも、今のほうが見えてきた、わかってきたことがあります。ないものねだりや人と比べること、将来への不安にさいなまれること…そういったことに対して、まるで優しく説教してくれているような、今も本当に天国から見ていてくれるような気持ちになるんですよ。
取材から10年以上が経って思い返してみると、そのときは気付かなかったことが真実として迫ってきます。「目の前のことをコツコツやっていれば見えることがある」とご夫妻は言われましたが、この作品を作った当時よりも、今のほうが見えてきた、わかってきたことがあります。ないものねだりや人と比べること、将来への不安にさいなまれること…そういったことに対して、まるで優しく説教してくれているような、今も本当に天国から見ていてくれるような気持ちになるんですよ。
今もどこかで上映会が開催されている「人生フルーツ」
観客動員数1万人がヒットの目安と言われるドキュメンタリー映画ですが、「人生フルーツ」は、2025年現在で28万人もの方が観てくださいました。
SNSではバズるなんて言葉が使われますが、この作品に関しては、口コミが大きかったように思います。友人に、お母さんに、娘に…身近な人に勧めたい、誰かと一緒に観たい、という思いが長く支持されることにつながったのかなと感じています。
※自主上映会の申込は、下記「作品情報」内のリンクをご参照ください。
SNSではバズるなんて言葉が使われますが、この作品に関しては、口コミが大きかったように思います。友人に、お母さんに、娘に…身近な人に勧めたい、誰かと一緒に観たい、という思いが長く支持されることにつながったのかなと感じています。
※自主上映会の申込は、下記「作品情報」内のリンクをご参照ください。
映像の持つ可能性はむしろ広がっている
今後、テレビが今までのような影響力を持つことはなくなっていくでしょう。一方で映像で何かを伝えたいと考えていたり、何かを知る人は多い。映像の持つ可能性は、むしろ広がっていると思います。
行ってみたい、どこなんだろうと感じる何気ない風景。津端さんのおうちに懐かしさを感じられた方もいらっしゃると思うのですが、「ふるさと」を感じるストーリーを今後も作っていきたいと考えています。
行ってみたい、どこなんだろうと感じる何気ない風景。津端さんのおうちに懐かしさを感じられた方もいらっしゃると思うのですが、「ふるさと」を感じるストーリーを今後も作っていきたいと考えています。
作品情報
人生フルーツ
高蔵寺ニュータウンの一隅にある雑木林に囲まれた一軒の平屋。それは建築家の津端修一さんが、師であるアントニン・レーモンドの自邸に倣って建てた家。四季折々、キッチンガーデンを彩る70種の野菜と50種の果実が、妻・英子さんの手で美味しいごちそうに変わります。長年連れ添った夫婦の暮らしは、細やかな気遣いと工夫に満ちていました。
かつて日本住宅公団のエースだった修一さんは、阿佐ヶ谷住宅や多摩平団地などの都市計画に携わってきました。1960年代、風の通り道となる雑木林を残し、自然との共生を目指したニュータウンを計画。けれど、経済優先の時代はそれを許しません。修一さんは、それまでの仕事から距離を置き、自ら手がけたニュータウンに土地を買い、家を建て、雑木林を育てはじめましたーー。あれから50年、ふたりはコツコツ、ゆっくりと時をためてきました。そして、90歳になった修一さんに新たな仕事の依頼がやってきます。
ナレーションをつとめるのは女優・樹木希林。ふたりの来し方と暮らしから、この国がある時代に諦めてしまった本当の豊かさへの深い思索の旅が、ゆっくりとはじまります。
- ジャンル
- ドキュメンタリー
- 公開年
- 2016年
- 監督
- 伏原健之
- 主な出演者
- 樹木希林(ナレーション)
- 配給
- 東海テレビ放送
- 製作
- 東海テレビ放送